第3回

CPUの性能について知ろう!

今回の登場人物

スマ子

スマホ大好き。パソコンのことは全く分からない。

パソたん

パソコンおたく。よく分からない知識が豊富。

「なんだかあたし、どんどんパソコンに詳しくなってる気がする・・・!」

「それはなにより。今回もじゃんじゃかやっていくよ」

「今回は何をするんだっけ?」

「今回はズバリ、結局どのくらいのスペックがいいのかってことだよ」

「おお~、いきなり切り込んできたね。それでどのくらいがいいの?」

「前回CPUのブランドネームを教えたのは覚えてるよね」

「うんうん」

「結論から言えば、Intel Core i7でメモリ8GBか16GBのパソコンを買っておけばまず間違いないよ」

「そうなの?」

「なんと言っても流通しているグレードでは上位クラスだからね。なんでも快適に動くと思うよ」

「なんだ、そんな簡単な話だったんだぁ。でもそんなこと言って大丈夫?このコラムもう連載終了になっちゃうよ?」

「もちろん、ここでコラムを終わらせる気はないよ。

これはあくまで、パソコンの性能について細かく考えるのが難しいときの脱出口として覚えておいて欲しいな」

「脱出口?」

「例えばスマ子がクルマを買うとき、わたしが『クラウンにしておけばまず間違いないよ』って言ったら、スマ子はクラウンにする?」

「それは-・・・極端だよパソたん。最初は軽自動車か、せいぜいコンパクトカーにするよ」

「どうして?クラウンなら高級感もあるし、エンジンもパワーあるし、装備も充実してるよね」

「確かに良いクルマだけど、いきなり大きいセダンは運転する自信がないし、なによりお金がかかるもん・・・」

「そうだよね。装備や性能がいくら最上級でも、使用目的や予算の問題があるから簡単には買えない。パソコンも同じなんだよ」

「パソコンがクルマと同じ?」

「そう。最上位クラスの性能を選んでおけば、たしかに間違いはない。

でもユーザーにはひとりひとり違ったニーズがあるし、高性能なパソコンは値も張る」

「性能と実際の使用率があまりにもかけ離れていると、スペック的にも金銭的にももったいなくなるんだ 」

「そういうことだったんだね!でも本当に必要な性能ってどのくらいなのか、あたしには分からないよ?」

「それを知るには、使うソフトの最低スペック推奨スペックがどのくらいなのか知る必要があるよ」

「最低スペックと推奨スペック?」

「そう。最低スペックは文字通りそのソフトが起動する最小限の性能レベルで、推奨スペックは快適に動かせる性能レベルの水準だよ」

「これはソフトのホームページにだいたい記載されているから、実際に見に行ってみるのが早いね」

「インテル入ってるね!」

「例えばこういうスペックを要求してくるソフトの場合、Intel core i3-3240以上の性能があるCPUを選べば確実に動くよ」

「無視しないで!(泣) でも思ってたより簡単そうだね」

「core i3-3240以上のCPUって、具体的にはどのくらいの性能なの?」

「基本的にはcore i5以上のブランドか、第3世代より後のモデルか、

同じ第3世代ならプロセッサナンバーが3240より大きいモデルか、ということになる」

「だけど、3240はデスクトップだから、ノート用と比較するのは少し難しい。

電力やプロセッサの種類によってこの見分け方が通用しない時もあるよ」

「え~っ、それじゃどうやって判断すればいいの?!」

「そこで活躍するのがベンチマークスコア。ようはCPUの共通模試みたいなものだね。

これは同じ条件で処理をさせたときの能力を得点化したもので、検索するとすぐ出てくるよ」

「ほう?」

「例えばcore i3-3240のCPUのスコアが1000だとしたら、1001以上のスコアを出しているCPUは、

デスクトップ用・ノートPC用問わず確実にそれ以上の性能を持っていることになる」

「それじゃあそのスコアさえ分かれば怖い物なしってこと?」

「そうなるね。身も蓋もないことを言ってしまえば、CPU選びとGPU選びは、

ベンチマークスコア比較さえしてしまえばすぐに決まるよ」

「ちなみにベンチマーク計測方法は複数種類あるから、

同じ条件でなるべく多くのCPUのスコアを、一覧で比較できるようなサイトが好ましいね」

「具体的にはどういうものがあるの?」

「代表的なものとして、CPUや内蔵GPUもひっくるめた総合評価を数値化するPassMark、

純粋にCPUの処理性能のみを評価するCINEBENCHのスコアなんかがあるよ」

「CPUブランド名とベンチマークスコア...と。

これさえ分かってしまえばもう大丈夫だね!ありがとうパソたん!ちょっとパソコンを選んでみるよ!」

「お役に立てたようでなによりだ」

~~~~~~5分後~~~~~~

「パソた~~~ん、助けて~~~!(涙)」

「どうしたのスマ子、さっき満面の笑みで退出したばかりだったじゃないか」

「それがね、パソたんの言った通り推奨スペックを調べてみたのに、全くインテル入ってないんだよぉ~」

「落ち着いて、とりあえずそれを見せてごらん。なになに・・・」

「ブランドネームが分かんないんじゃ性能を調べようがないよ~」

「そうだった・・・最近はこういう書き方の推奨環境が増えてきてるんだった・・・」

「これってどういうことなの~?もうcore i7のパソコンで良い・・・?」

「まあ待とうか。これはソフトを動かすのに必要な最低限のコア数とクロック数が指定されているってことなんだ。

逆に言えば、コア数クロック周波数が条件を満たしていれば、どのブランドのCPUでも良いってことなんだよ」

「コア?クロック?」

「そう。CPUはパソコンの頭脳となる1個の部品として教えたけど、実際には演算を行う頭脳、つまりコアが複数入ってるんだ。

そしてコアには、実際に処理できる作業レーンの数、つまりスレッド数がある」

「頭脳と作業レーンの数?どういうこと?」

「会社員の仕事で例えてみようか」

「たとえば別々の2つの仕事をこなすとき、1人より2人で分担した方が効率が良いよね。

コア数も同じで、コア数が多い方が複数の違う作業を同時にこなせるから、性能が高くなるんだ」

「でもたまに、電話しながら書類作成もこなせる余裕がある、

つまり1人(1コア)で2種類の作業ができる会社員もいるよね。」

「CPUも同じで、ひとつのコア性能の余力を使って、コア2個分の作業ができるようになっているものがあるんだ。

これが実際の作業レーンの数、つまりスレッド数になるね」

「すごい!」

「コア数とスレッド数は、実在する数と理論上の数ということで、物理コア数と論理コア数とも呼ばれるよ。

物理コア数が同じであれば、論理コア数―スレッド数が多い方が作業効率は良いんだ」

「ふぅ~ん、それじゃあスレッド数が多いものを選ぶほうが良いの?」

「基本的にはそうなるね。でも仮に電話の内容が複雑だったり、

書類仕事がひとつのミスも許されないものだったりしたら、どうなるかな」

「どちらかひとつに集中しないといけないね」

「その通り。同様にCPUも、忙しい作業によっては片方のスレッドしか使えないことがあるんだ」

「え~、それじゃあせっかくスレッド数が多くても、有効活用できないかもしれないってこと?!」

「まあ普通に使ってるぶんにはほとんど問題ないよ。

それに物理コアの数さえ満たしていれば、論理コアがいくつでも大丈夫だからね」

「ただし複数のCPUを比較して性能に順番を付ける場合、前回やったブランドネームと世代数の要素、

そしてクロック周波数も性能に影響を及ぼすから、必ずしもコア数とスレッド数だけで序列が決まるわけではないよ。

それにそういったCPUの性能比較はベンチマークスコアを使えば良いから問題ないけどね」

「じゃあこの場合、2コア以上のCPUを持ったパソコンにすればいいんだね!

それで、クロックって何のこと?」

「クロック周波数というのは、端的に言えば一定時間あたりのCPUの処理性能のことだよ」

「たとえば作業量が10個の作業があったとしよう。

1秒間に作業を1個進める人と2個進める人、どちらのほうが早く作業を終えられるかな?」

「毎秒2個の人だね」

「その通り。クロック周波数っていうのも、1秒あたりの処理性能と考えれば良いよ」

「でもGHzって周波数の単位だよね?それがどうして処理性能の大小になるの?」

「この話は深入りすると電気工学の分野になるから、軽く触れていこうか。

(クロック)周波数というのは、1秒間に出せる電気信号の数値なんだ」

「ほうほう」

「CPUも演算には電気信号が使われるわけだけど、毎秒に出せる電気信号の数が多ければ多いほど、

毎秒に処理できる情報の量もより多くなる」

「うんうん」

「つまり、毎秒の電気信号数が多い、つまり周波数が高い方が、CPU性能が高いことになるんだ」

「へぇ~・・・。それじゃあこの場合、1.6GHzより大きいクロック周波数のCPUを選べば快適ってこと?」

「そしてコア数が2個以上であること、だね」

「ちなみにCPUのクロック周波数を理解するには、ベース動作周波数とブースト最大周波数にオーバークロック、

それからそれらに大きく関わる電力と熱量についても頭に入れておく必要があるよ」

「えっ、クロック周波数ってひとつだけじゃないの?!どういうこと~?!」

「今回は少し濃密で複雑になっちゃったから、また次回にしようか」

今回のまとめ

  • 必要なスペックを知るには、使うソフトの推奨環境を目安にしよう!

  • CPU性能の比較はベンチマークスコアを見るべし!

  • CPUの物理コア数が多いほど処理性能が高い※

  • 同じ物理コア数なら論理コア(スレッド)数が多いほど処理性能が高い※

  • CPUのクロック周波数が高いほど処理性能が高い※


※この項目はブランド、世代数などの条件によって序列が変化することがあります

練習問題

「今回はちょっと複雑になっちゃったね。練習問題を実際にやって感覚を掴もう」

問1

物理コア数が2コアのAと4コアのBという、同じ世代の2種類のCPUがある。両方ともクロック周波数が1.44GHzとなっている場合、どちらの性能が高いと思われるか。

問1の解答

パソたん「クロック周波数が同じだと、基本的にコア数が多ければ性能が高いよね。つまり正解は4コアのBだよ」

問2

クロック周波数が2.0GHzのaと3.5GHzのbという、同じ世代の2種類のCPUがある。いずれも2コア2スレッドである場合、どちらの性能が高いと思われるか。

問2の解答

パソたん「これは問1の逆パターンだね。同じコア数であればクロック周波数が高い方が性能が高くなるから、答えはbだね」

問3

Intel core i5-10210U、Intel core i5-7300HQ、Intel core i7-2700Kの3種類のCPUがある。ベンチマークスコアをもとに、これらを性能の高い順番に並び変えろ。

問3の解答

パソたん「ベンチマークスコアを調べて並び変える練習だよ。わたしが検索して調べたスコアは以下の通りになったよ」


core i5-10210U:スコア646

core i5-7300HQ:スコア506

core i7-2700K:スコア633

※CINEBENCH リリースバージョン15の数値による


「あとはこれを比較して高い順に並べるだけ。そうすると上から

core i5-10210U

core i7-2700K

core i5-7300HQ

という順番になるね。これが答えだよ。

ただしベンチマークスコアについては、サイトやベンチマーク条件(Pass Mark、CINEBENCHバージョン等)によって上下するよ。この問題はスコアを比較して性能を並び替えられれば正解ということにしよう

ブランド的にはcore i7>core i5、末尾の記号的にはK>HQ>Uの順に高いはずなんだけど、CPUの世代差次第では下克上が起こっちゃうんだね。7300HQユーザーとしてはちょっとショックだよ。」