第4回

クロック周波数の内容を理解しよう!

今回の登場人物

スマ子

スマホ大好き。パソコンのことは全く分からない。

パソたん

パソコンおたく。よく分からない知識が豊富。

「今回は、えーっと・・・クロック周波数だっけ」

「うん。特に今回は、ベース動作周波数ブースト最大周波数、それからオーバークロックについての話だよ」

「CPUの項目多くない?もう3回目だよ~?」

「確かに多いかもしれないけどね。でもCPUについてはもうすぐ終盤だから、あと少しの辛抱だよ」

「ヒエ~」

「今回は早速、実際にCPUのスペックページの数字を見てみようか」

「これを見ると、クロック周波数はひとつでなく、何種類か書かれていることに気付くと思うんだ」

「これが前回から言ってたベース動作周波数とブースト最大周波数だね。なにが違うの?」

「ベース周波数というのは、そのCPUの消費電力を計測するのに使われている数値だよ。定格クロック数とも呼ばれるんだ」

「そしてブースト最大周波数とさっきから呼んでる『ターボ・ブースト利用時の最大周波数』。

Intel ターボ・ブースト・テクノロジーとAMDのTurbo core テクノロジーというものがあって、

定格の周波数で少し処理が間に合わないときに、処理が集中しているコアのクロック数を一時的に引き上げるんだけど、

これはその最大周波数を表しているよ」

「つまりは・・・?」

「このCPUの最大出力ってことだね。基本的にCPUのクロック周波数を考えるときは、

このターボ・ブーストされた値をもとに比較すると良いよ」

「急に情報量が多くなってよく分からなくなってきたよ?」

「上の表のIntel Core i5-10210Uの場合、定格では1.6GHzということになっているけど、

ブースト時の最大周波数は4.2GHzだから、CPUのクロック周波数は4.2GHzとみなしていいんだ」

「前回の推奨スペック表を覚えてるかな。ビデオ通話を使う場合は2.0GHz以上としていたけど、

このようにブースト周波数が2.0GHz以上なら、この条件も余裕でパスしていることになるよ」

「ほへぇ~・・・。でもこんなややこしい考え方をするのなら、最初からブーストされた周波数を動作周波数にしちゃえば良いんじゃないの?」

「ところがそうもいかないんだ。CPUっていうのは高速に処理を行えば行うほど、

つまりクロック周波数が高くなればなるほど電力消費も多くなってしまう。

さらには発熱して、時には自身を熱で破壊しちゃうことだってあるんだよ」

「えっ、CPUってそんなに高温になるの?!」

「良い子は真似してはいけないけど、動画サイトの有名な動画で、CPUで焼肉したものがあるくらいには熱くなるんだ。

もちろん、ターボ・ブーストやCore Turboで引き上げられる値は、

冷却機構さえちゃんとしていれば故障しない範囲に設定されているよ」

「そんなに熱くなっちゃうんだねぇ」

「よく古いパソコンで『昔より動作が悪くなった』という話を聞くけど、

本当に経年劣化している場合のほかに、単に排熱部にホコリが詰まって熱がこもり、

処理性能がダウンしているだけということもあるよ。それだけ熱に関してはシビアなんだ」

「それにこの、必要なときだけパワーアップする設計は、構造も供給電力が限られているノートパソコンではとても役に立っているんだよ」

「ノートパソコンで?」

「バッテリ稼働時のノートパソコンは1秒でも長く稼働してくれないと困るよね。

でももし高いクロック周波数を維持し続けると・・・」

「電力をいっぱい消費してしまう?」

「そう!そこで、ここぞという時だけクロック周波数を上げて、他は定格以下で稼働させられれば・・・」

「処理能力をたいして使ってない時間はエコに運用できるってことだね!」

「さすが、スマ子は理解が早くて助かるよ!さらに、ノートパソコンでは冷却装置の設計に制限があるから・・・」

「クロック数が低いほうが発熱も少なくて有利!」

「正解!ここまで理解できるようになるとは、わたしも感激だよ(およよ)」

「もうパソたんは大袈裟だなぁ~。それじゃあこれでCPUの項目はおしまいってことでいいのかな?」

「よくぞここまで辿り着いた、勇者よ。パソコン選びに必要なCPUの基礎知識は、だいたいここでおしまいだね」

「やったぁ~!・・・ん、でもまだオーバークロック?が残っている気がするね」

「そうだね。クロック周波数関係だから一応名前を出してみたけど、

実は限られた条件でしかできなくて、しかもメーカーの保障対象外になるから、

また別の機会にしようかな」

「えっ、やらないの?!」

「パソコン初心者には少しハードルが高い項目になるからね。

また別の機会に教えようと思うよ」

火災のような事故に繋がる恐れもあるよ」

「もし興味が出てきたら、検索してみると簡単に情報が見つかるから、調べてみると良いよ」

「それじゃあほとんど気にしなくていいんだね」

「うん。それから最後に、これも予備知識なんだけど、CPUのキャッシュメモリについて」

「キャッシュメモリ?」

「簡単に言えば一時記憶だね。CPUとメモリは作業者と作業机として教えたと思うんだけど」

「うん」

「CPUとメモリが別のパーツである以上、データのやり取りには少しタイムラグがあるんだ。

そこでいちいちメモリからデータを全部引っ張ってくるんじゃなくて、CPU内部に一時記憶できる場所を用意してあるよ」

「教科書を書き写すときに、頭の中で文章を読み上げながら書いていくのと似ているね」

「まさにそんな感じだね。ちなみにキャッシュメモリのサイズはCPUのブランド依存になるから、

あんまり選択の自由度ないし、気にする必要もないよ」

「これで今度こそ、CPUの項目は終わり・・・?」

「そうだよ。長かったね、お疲れ様」

「ふわぁ~~!やっと終わったぁぁ~!」

「それじゃあ次回はメモリについてだね。この先は割とサクっと終わる話ばかりだから安心していいよ」

「パソたんの『サクッと』は結構ガッツリだから心配だなぁ・・・」

今回のまとめ

  • クロック周波数には「ベース動作周波数(定格動作周波数)」「ブースト最大周波数(AMD Turbo Core)」の2種類がある

  • クロック周波数を指定する推奨環境表では、ブースト最大周波数を合わせればOK

  • クロック周波数が高いと性能も上がる半面、消費電力や発熱は増えてしまう

  • ハイリスクだがオーバークロックという行為もある

  • 一時記憶のキャッシュメモリというものがCPUには内蔵されている

練習問題

「今回も実践的な練習問題を用意したよ。調べるのはちょっと面倒だけどやってみてね」

推奨環境が2コア以上、クロック周波数2.4GHz以上というソフトウェアを使いたい。次の3種類のCPUのうち、このソフトウェアを使うのに適切でないものはどれか。

①Intel core i7-8500Y ②Intel Celeron N3050 ③AMD A9-9420

解答

パソたん「今回はよりどりみどりなブランドネームを並べてみたよ。まずはそれぞれのスペックについて見ていこうか。少し項目名を省略するよ」


Intel core i7-8500Y (2コア4スレッド、ベース1.5GHz、ブースト4.2GHz)

Intel Celeron N3050 (2コア2スレッド、ベース1.6GHz、ブースト2.16GHz)

AMD A9-9420 (2コア2スレッド、3.0GHz、Turbo Core 3.6GHz)


パソたん「スペック値が出揃ったね。これをもとに推奨環境のポイント、①コア数と②クロック周波数を見ていこうか。

まずコア数についてはどのCPUも2コアあるから大丈夫だね。次にクロック周波数だけど、一目瞭然、Celeron N3050が明らかに足りないね。よって正解は②のIntel Celeron N3050だよ」


パソたん「ちなみにクロック周波数で2.4GHzを要求してくるソフトウェアなんて、だいたいゲームか、高いグラフィック性能を要求してくるお絵描きソフトウェアが大半だから、Wordとかしか使わないなら滅多に見ることもないよ」