第7回

グラフィック性能を考えてみよう!

今回の登場人物

スマ子

スマホ大好き。パソコンのことは全く分からない。

パソたん

パソコンおたく。よく分からない知識が豊富。

「ふう・・・やっと記憶装置の知識があたしの頭にインストールされたよ」

「おかえりスマ子。実は、スマ子の帰還が思ってたより早くて、次になにを話すかまだ決めてないんだよ」

「パソたんにしては意外な悩みよう・・・」

「そうだ、それじゃあグラフィック性能について教えてよ。

たしか第2回で、ゲームするのにGPUが重要だって言ってたよね?」

「そういえばゲームもできるPCって言ってたね。よし、それじゃあ今回はグラフィック性能でいこうか」

「待ってました! 」

「まずGPUというのは、大量の処理を同時に行う必要がある

画像や3Dモデルの処理に特化している部品だよ」

「と複雑に定義してみたけど、つまりは画面に表示する機能の頭脳だね。

CPUが文章や構成を担当するとしたら、GPUはひたすら挿絵を担当するイメージだよ」

「文章とイラストで分担作業をしてるんだね」

「ちなみに大量処理が可能なGPUの処理力を、

通常CPUが行う演算処理に活用するGPGPUという設計思想もあって、

AMDのCPUのうち、GPUを内蔵したAPUと呼ばれるCPU群がこれを採用していたりするよ」

「ひえ~、基礎能力が高いCPUみたいな感じでも使えるんだねぇ」

「それから、GPUの選び方も基本的にはCPUと同じだよ。

遊ぶゲームの要求性能ブランド以上のGPUを、やっぱりベンチマークスコアを参考に選ぶんだ」

「場合によってはGPU専用メモリ―つまりビデオメモリや本体メモリの容量、

画面の解像度なんかも気にすることになるけどね」

「なるほどね~。でも、パソコンを何種類か見る限り、ビデオメモリの表記があるものとないものがあるよね?」

「そう。実はGPUにはCPU内蔵型と、単独部品のグラフィックカード等・・・

便宜上”独立型”と呼ぼう。この二種類があるんだ。そのことを頭に入れた上で見ていこう」

「言葉と会話の流れからなんとなく構造はイメージできるけど、具体的にはどういうものなの?」

「よく見るインテルブランドのGPUとか、さっき触れたAMDのAPUなんかは内蔵型GPUにあたるね。

独立型では代表的なものとして、NVIDIA社のGeForceシリーズやAMDのRadeonシリーズがあるよ」

「GeForceシリーズでもGTXやRTXと銘打たれたシリーズは、

とくにゲーミング性能に特化したラインになっているんだ」

「へ、へえ・・・。シリーズは分かったけど、内蔵型と独立型で、性能的には何が違うの?」

「そう言うと思って簡単な図を用意済みだよ。はいドン!」

「一番違うのは、やっぱりGPU専用のメモリを持っているかどうかかな。

CPU内蔵型はパソコン本体のメインメモリを共用するから、

コンテンツやメインメモリ数によってはメモリ不足の心配もあるよ」

「そしてCPUの一部分として組み込まれている内蔵GPUの宿命として、

冷却性能や性能設計に構造上の限界がある。

極端に高性能化させることは難しいんだね」

「それじゃあ独立型のほうが・・・ちょっと待てよ、この問答のパターンは記憶装置で見たな?」

「鋭いね。独立型のGPUにもやっぱり同じように得手不得手の二面性があるよ」

「以前CPUの項目で、出力が高ければ高いほど消費電力や発熱量も多くなるという話をしたのは覚えてるよね?」

「覚えてるよ~」

「例えばデスクトップPC向けのGPUやビデオメモリが搭載されたパーツ、

つまりグラフィックボードは、バカでかい冷却装置がセットになっていたりする」

「つまりそれだけの冷却装置を必要とする発熱が大前提のパーツになるんだけど、

冷却性能に限界があるノートパソコンでは設計に無理が生じるよね」

「そしてそれだけの発熱をする出力があるということは、

省電力設計のパソコンなんかとは本来そりが合わないんだね」

「CPUのときと全く同じ現象が起こってしまうというわけなんだね」

「それから、これもCPUで述べたことと同じ現象で、

性能が高ければ高いほどパーツコストも上がってしまうわけだ」

「それじゃあノートパソコンを選ぼうと思ったらGPU性能は諦めたほうがいいのかな・・・?」

「ところがここ数年はそういう話でもないんだよね」

「???」

「実は、上で述べたことはもう昔の話。

今では消費電力や発熱量はノートパソコンに最適化させつつ、

ベンチマークスコア基準でデスクトップ向けと

ほぼ同等の性能を叩き出せるくらいに進化したんだ」

「あ、もちろんGPU性能次第で、CPU内蔵型より消費電力は多くなるからね」

「それなら安心だね。でもやっぱり本体価格の上昇は避けられないのかな?」

「価格の上昇は仕方ないね」

「でも、例えばCPUをワンランク下げたり、

SSD搭載モデルでなくHDD搭載モデルを選ぶみたいな、

他の部分で価格調整するという手もあるよ」

「それじゃあ独立型GPUを持ったノートパソコンも視野に入れちゃっていいんだね!」

「ちなみにスマ子、わたしはスマ子がゲームをやるイメージってほとんどなかったんだけど、

どういうパソコンゲームをやるの?」

「あたしだってパソコンゲームくらいやるよ。

えーっとね、これ!この『ライブの王子様』っていうカードコレクションゲームだよ!」

「うーん・・・?これ、ブラウザゲームだよね・・・?」

「ブラウザゲームはOS要件とブラウザ要件さえ満たしていれば動く場合がほとんどだから、

グラフィック性能はあんまり関係ないかな・・・」

「えっ―」

今回のまとめ

・グラフィック性能の選び方も基本的にはCPUと同じ

・CPU内蔵GPUとグラフィックカードの違いを理解しよう

・ブラウザゲームではOSやブラウザの要件を満たせば動くことが多い ※

※ゲームによって異なる場合があるので、ゲームの推奨環境をあらかじめ確認しておこう!

練習問題

「GPUの性能の考え方も基本はCPUと同じで、内蔵型もいわゆる独立型もまとめて何かしらの同じ基準で計測したベンチマークスコアをもとにランク付けをしていくよ」

「今回はベンチマークスコア比較の要素に少しプラスアルファした、実践的な性能の見方を練習していこう」

次のような推奨スペックのゲームをプレイしたい。この場合、以下に示す(a) (b) (c)それぞれのグラフィック性能は足りるか、足りないか。


推奨環境

グラフィック:NVIDIA GeForce GT 1030 相当以上のグラフィックカード

ビデオRAM:2GB以上

サウンドカード:Deirect Xサウンド対応


(a)NVIDIA GeForce GTX 1050 Max-Q

(b)Intel HD Graphics 630

(c)NVIDIA GeForce MX230

練習問題の解答

パソたん「まずはGeForce GT 1030、同社GTX 1050 Max-QとMX230、Intel HD Graphics 630のベンチマークスコアを調べる必要があるよ。例によってサイトや計測方法で数値が前後するので詳細は省くけど、この場合のスコア序列は

GTX 1050 Max-Q > GT 1030 > MX230 > Intel HD 630

というふうになるハズ。これをもとに考えると、推奨環境以下になる(b)(c)は足りないと判断できるね」

パソたん「スコア上は推奨GPUより同等以上でも、ビデオメモリの容量が要件を満たせないケースもあるよ。この場合のGeForce GTX 1050 Max-Qはビデオメモリが4GBらしいから、この条件も満たせているね」


パソたん「つまり解答は、『(a)は足りる、(b)(c)は足りない』となるわけだね」


パソたん「ところで、このMax-Qというのが、NVIDIA社によるノートパソコン向けのGPU省電力・高出力技術。

このおかげで薄型ノートパソコンのハイパフォーマンスマシンが各社からリリースされるようになったんだよ」


パソたん「それから、”ユーザーによって好みが分かれる項目”としてグラフィック性能を説明してきたけど、実はゲームをしない場合あまり気にしなくても良い項目だったりするよ」

パソたん「もしもやりたいゲームの推奨環境表がグラフィック関係を細かく指定してくる場合は、ゲーミングPCを選んでみるのも良いかもしれないね。一般的なPCとゲーミングPCの違いは、次回ちょっと触れていこう」